恋するキミの、愛しい秘めごと


――1年。

1年で変わる事が出来ると思った。


例え自分の中できちんと整理しきれなかったとしても、せめて他人の前にいる時くらいは嘘でも“忘れたフリ”が出来るくらい。

それくらいは、強くなれると思ったのに……。


「……っ」

ボロボロと零れてしまった涙を隠すように、下を向いた。


封筒の中に入っていた紺色のカード。

銀色の文字が涙で滲んでキラキラ光って……まるであの“地球”みたい。


そんな事を考える自分がまた嫌で、耐えられそうになくて。


もう関わるのはやめよう。

そうしないと、いつまでも同じところをグルグル、グルグル回り続けて、きっとカンちゃんを想い続けてしまう。


「すみません。私は行けません」

テーブルの上に封筒を置いた私は逃げるように席を立ち、ドアに向かって歩き出す。


――けれど。

「南場さん」

それまで黙っていた篠塚さんの声に、ピタリと足を止めた。


「誤解しないで」

「……“誤解”?」

思わず振り返った私に、篠塚さんは苦笑して言ったんだ。


「私と完治は、とっくの昔に終わってる」

「え?」

思ってもみなかった一言に、立ち尽くしたまま言葉を失う。


だって、そんなはずない。


「その顔は、納得いってないって顔ね」

クスッと笑った篠塚さんは、徐に席を立って私に歩み寄り、手首を掴んで元いた席に座らせる。

まるで諭すように、ゆったりとした口調で話す彼女の言葉を、私は息を飲みながらただ静かに聞いていた。


「私とシュンと完治の話は聞いてるわよね?」

それに小さく頷くと「男って意外と口が軽いからイヤ」なんて言いながら、素知らぬ顔でワインを飲む榊原さんをひと睨みして、「まぁいいけど」と気を取り直したように再び話し始める。


「実はね、完治からイギリスに行くって聞かされた時、“一緒に連れて行って”ってお願いしたの」

「……」

「結論から言うと、一緒には行けないって言われたんだけど――その時に、あなたが“ヒヨちゃん”だって明かされたの」


それじゃー、篠塚さんは……。


「そう。あなたが完治のイトコだって事はしばらく前から知ってた」

「……っ」

そんなの、全然気がつかなかった。


篠塚さんは、1年前の時点で私の正体を知っていた。

それなのに、騙していた私を怒りもせず――それどころか、ずっとそばで支えてくれていたの?


真っ直ぐな瞳から目を逸らすことも出来ないまま、言葉を発することも出来ない私に、篠塚さんはどこか自嘲とも取れる笑みを向ける。
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