恋するキミの、愛しい秘めごと
談笑をしていた人達が、部屋を移動していく気配がして、伏せていた瞳を開く。
そして、椅子から立ち上がって――。
「……っ」
開け放たれた扉の、その先に置かれた大きな球体を見た瞬間、一気に溢れ出た涙が頬を濡らした。
滲む視界の先にあるのは、ここよりもひと回り小さな部屋の、一番目立つ場所に置かれた大きな“地球”。
それがキラキラキラキラ、静かに輝いている。
カンちゃんはこれを、“本物じゃない”と言った。
確かに目の前のこの球体は、カンちゃんが直接作った物ではないのかもしれないけれど……それでも。
こんなに人の心を揺さぶる物の原型を作ったのは、カンちゃんだ。
こんなにも沢山の人達が、こんなにも幸せそうな表情を浮かべながら――こうしてこの“地球”を見上げている。
それって本当にすごい事で、今すぐこの景色をカンちゃんに見せたいと思った。
そしたらきっと、カンちゃんはすごく嬉しそうな顔をしながら、「俺が作ったんだから、当たり前じゃね?」って笑うんだろう。
しばらく見惚れるように輝く“地球”を見上げていた人達が、更に奧に続く部屋に移動して行くのを見て、私もゆっくり歩き出す。
人々がドアを開けるたび、細い光が漏れるあの部屋が、きっとパーティー会場なのだろう。
それでも私は、なかなかその場から動き出すことが出来ずに。
“これが完成した時、榊原さんはどんな気持ちだったのだろう”とか、“これを実際に見た時、カンちゃんはどう思ったのだろう”とか――そんな事を考えながら、静かに光る球体を見上げていた。
その間も、パーティー会場に急ぐ人達のパタパタという足音が後ろを通り過ぎて行く。
「私も行かないと……」
バッグの中の時計で時間を確認して小さく呟くと、もう一度その星を見上げて歩き出した。