恋するキミの、愛しい秘めごと
気持ちを告げなければ、いつまでも日和のイトコとして、上司として傍にいることは出来る。
だけど、傷ついた日和につけ込んで、自分の痕をその体に刻み込んで……。
俺が、日和を混乱させているだけなんじゃないかって思ったんだ。
膨れ上がる日和への想いは、純粋なものとは程遠い。
自分が彼女の傍にいていいのかが分からなくなった。
それなら一度離れて、自分の周りをスッキリさせてから、きちんと日和と向き合いたいと、そう思った。
もしもその時、日和に大切な人が出来ていたらその時はすっぱり身を引いて、日和の幸せを願おうって――そう心に決めたはずだったのに。
いざそれを目の当りにしたら、祝福なんて出来そうにもなかった。
俺の「好きだ」という言葉に、自分も好きだと答えてくれた彼女。
だけど俺も知らなかった、榊原さんの日和への真っ直ぐな気持ちを知って、それに涙を流す彼女の揺れ動く気持ちに気が付いてしまった。
他の男のことで泣かないで欲しい――なんて、自分の余裕のなさと懐の浅さに笑ってしまう。
もう無理だと思った。
こんな自分では、ダメだと思った。
だから日和から離れる決心をしたのに……。
それなのに、今更、あの日の事を後悔するなんて。
ホント、アホか俺。
来月オープンする予定の、新しい展示室の床に座りながら、カチャカチャと部品を組みて立てていく。
だけど心の中がモヤモヤとしているせいか、いつもは簡単に出来る作業がなかなか思うようにいかない。
「あー、クソ!」
大体冴子もさ、わざわざ連絡してこなくていいだろ。
俺と日和はイトコなんだから、嫌でもわかるんだっつーの!!
まぁ、全部八つ当たりなんだけどさ!!
誰もいないガランとした部屋で、自分にツッコミを入れながら、頭を掻きむしる。
日和が幸せならそれでいいんだって、本気でそう思うんだけどな……。