寂しいなんて言わない



何の涙?



あたしはまだ、基夜が好きなの?



ううん…………



今電話してるのは基夜なのに、



どうしようもなく、今



相澤くんに会いたいんだ………





だから、これはきっと


やっと過去から抜け出せた


嬉し涙。





「だから、ね………さよなら………

基夜のこと、ほんとにっ………好きだった……

幸せにできなくて………ごめん、ねっ…

さくらちゃんと……幸せになってね……」




そう言って電話を切ろうと思ったら



「待てよ……俺も言いたいこと

あるんだけど………」



「え、………?」



予想もしてなかった基夜の言葉に


涙が止まった。



「なに………?」



「俺だって、由湖のこと好きだった……

この前病院に来てくれた時も

久しぶりに見てキレイになった由湖を見て

今すぐ抱きしめたいって、そう

思ってた…………」




うそ…………


今さらそんな、あたしの


心を揺さぶるようなこと言わないでよ………



「だけど由湖はもう、俺のこと

必要としてないなって心のどこかで

思ってた……篤史といる由湖を見て

そう思ったんだ…………」




え…………?



でもあの時は、自分でも


基夜のことまだ好きなんだって



実感したのに?



相澤くんにも『まだ好きだって気づいてた』


って言われるくらいなのに?




「お前ら2人とも鈍感だからな

けど俺は気づいてたよ………ずっと

由湖のこと見てたからな………」




………………基夜……



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