スーツを着た悪魔【完結】
だけど考えなくたって、ふとした瞬間に怖くなる。
心細くて、泣きたくなる……。
雨は嫌い……
息をつめるように立ち尽くしていたまゆは、ゆっくりと息を吐いてズキズキと痛み始めたこめかみを指で押さえる。
「――まゆ!?」
名前を呼ばれて顔をあげると、向こうから一人の男が走ってくる姿が見えた。
一瞬『ゆうちゃん』かとギクッとしたけれど、ほっそりした彼よりも一回り大きいその男は、近づいてみればなんと深青だった。
「深青……」
「戻ってこないから、どっかで雨宿りしてるんだと思ったんだ」
深青は傘を閉じまゆの前に立つと、途端に険しい顔をして眉をひそめる。
「濡れてる」
「書類は濡れてませんけど……」
「書類なんてどうでもいい。おまえだよ」
「あ……」
言われて気づいた。
まゆの両肩は雨でぐっしょりと濡れ、髪の先からぽたぽたとしずくが落ちていた。