スーツを着た悪魔【完結】
ハンカチを探したけれど、ポケットのない服を着ていたことに気付いて戸惑うまゆだったが、代わりに深青がスーツのポケットから絹のハンカチを取り出し彼女の濡れた頬をぬぐった。
本当は体も拭いてやりたかったが、さすがにそれはまずいと思い、そのハンカチをまゆの手の中に押し込む。
「これで」
「ありがとう……」
「いや」
まゆは深青のハンカチで、肩や首を押さえる。
深青の目から見て、十日ぶりのまゆは、なんだか一回り小さくなったような気がした。
雨に濡れたせいか? いや……そうじゃない。
ジッと見つめているとまゆが異常に青白い顔をしているのに気付いた。
魅力的な黒い瞳の下にうっすらとくまが残っているのにも。
「――お前、ちゃんとメシ食ってるか」
「お前って……言わないで」
まゆはうつむいたままボソボソと答える。
十日前と同じように、深青の視線を避けているようだった。
「誤魔化すなよ。どっか悪いんじゃないか?」
「――」
「まゆ」
「ッ……」