スーツを着た悪魔【完結】
けれど気が付くと壁に押し付けられたまゆの体は、ぴったりと深青と重なっていた。
洋服越しでも如実にわかる、深青のたくましい体。彼が本気を出せば、まゆの体など心まで一緒に折ってしまえるに違いない。
「まゆ……」
そして深青もまた、ひどく焦っていた。
腕の中に閉じ込めたまゆは、相変わらず捕食される前のウサギのように震えていた。
このまま彼女の喉元にかみついてしまいたいような衝動にかられたのは、生まれて初めてだった。
距離を取らなければ、自分がどうなるかわからない。無理やりにでも自分のものにしたくなるかもしれない。すべてを焼き尽くしてしまうかもしれない。
ただ――
彼女の黒い瞳は、怯えていながらもじっと自分を見つめて。
突き放そうとする彼女の腕は、同時に俺のスーツの上着をしっかりとつかんでいて。
離さないでと、叫んでいるように感じた。
「お前の『お願い』は、こうしてほしいってことだろ……?」
深青はそのまま顔を近づけ、まゆの唇に自分の唇を押しつけていた。