スーツを着た悪魔【完結】
クラクラする……。
唇を離した瞬間、深青はその場に倒れ込みたい衝動を抑えるために、ぎゅっと目を閉じた。
彼には珍しい、技巧もへったくれもないキス。
けれどそれだけ彼女が欲しくてたまらなかった。
「まゆ……」
「……ぁ……はぁ……」
まゆも同じように息も絶え絶えになりながら、深青を見上げた。
切なく、かすれた声で名前を呼ばれて、胸が締め付けられる。
ただ名前を呼ばれただけ。それでも苦しい。息が上手に出来ない。
「まゆ」
彼に名前を呼ばれるたび、まゆも同じように彼の名前を呼びたいと思ったのだが、名前を口にすることすら恥ずかしかった。
今私は、どんな顔をしているんだろう。
自分を見つめる深青の瞳を見返すのが精いっぱいだった。
まるで熱いお酒を流し込まれたかのように、喉からお腹までが熱くなる。
こんな風に体が熱くなることなんて、なかった。
こんな気持ちを私は知らない――