スーツを着た悪魔【完結】

――――……



深青は馴染みらしいハイヤーを呼び(二人ともずぶ濡れだったが乗車拒否もされなかった)そのまま彼の住む部屋へと向かった。


タワーマンションの最上階、ワンフロアを全て使った贅沢な部屋は、まゆの目には近代的な美術館のように映った。

床は白黒と格子模様になった大理石で、ドアを開けてもそのままずっと奥、窓が見える向こうまでフラットだった。

いったいお掃除はどうなっているんだろう。

お掃除だけする人が来るんだろうか……。



ドアのすぐそばにはシューラックがあった。

何十足もの靴が、まるでショーウィンドウのように飾られている。


真新しいルームシューズをまゆに履かせ、深青もまたモカシンタイプのルームシューズに履き替え、中へと入っていった。



まゆは深青に肩を抱かれて部屋に入りながら、視線だけで、周囲をきょろきょろと見回した。

空調が完璧に管理されているのか暑くも寒くもない。


キッチンとかベッドルームとか、どこにあるんだろう。



って。ベッドルームって……!


顔がカーッと熱を持つ。


そういうんじゃない。そんなつもりでここに来たんじゃない!


両手で熱くなった頬を押さえる。


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