スーツを着た悪魔【完結】

そうよ。深青だって風邪を引きそうだからって……それだけで……

だから……



「――風呂の用意をするからここに座って待ってろよ」



深青はまゆを玄関横に置いてあったソファーに座らせ、バスルームへと消えていく。



「うん……」



深青、いったい何を考えているの?
どうして私をここに連れて来たの?

さっきの情熱的なキスにはどういう意味があるの……?


そんなことを考えながら、まゆはぼんやりと壁にかかっている額縁を見つめる。


白い壁にいくつもかかっているそれは、ポートレイトだった。


年のころは十代だろうか。秋の落ち葉の中を歩いている女性の写真。
振り返ってにっこりと笑うその姿は可憐でとても愛らしかった。

腰まで届く巻き毛を一つにまとめて、薔薇と真珠をあしらったブローチを胸元につけている。

ほかにも、ドレスを着た女性が猫脚の寝椅子に座り、靴のつま先に触れている写真や、窓辺に立っている写真など――

カラー、モノクロ、トイカメラ風、色々あるが、壁にかかっている額縁はすべて同じ人だ。



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