スーツを着た悪魔【完結】

なんてきれいな人なんだろう。まるで天使みたいだ。

こんな美人、テレビでも見たことないよ……。


こんな風に大事そうに飾ってるってことはもしかして――

深青の、恋人……?


ズキリと胸が痛くなる。が、必死でその事実から目を逸らす。



だったらなんだっていうの。

私なんか……ただ一刻、彼が気まぐれに私に目を止めたようなもので……

あんなキスだって……気まぐれで……



「――まゆ」



名前を呼ばれて顔をあげると、真っ白なタオルと着替えを手にした深青が戻って来た。



「シャワーを浴びてこれに着替えるんだ」

「――」

「まゆ?」



顔を覗き込むと、まゆは深青の視線から逃げるように顔を逸らしたまま、深青の手から着替えとタオルを奪って立ち上がった。

そしてまるで草原で天敵を見つけた野兎のようにバスルームへと飛び込む。


< 155 / 569 >

この作品をシェア

pagetop