スーツを着た悪魔【完結】
なんてきれいな人なんだろう。まるで天使みたいだ。
こんな美人、テレビでも見たことないよ……。
こんな風に大事そうに飾ってるってことはもしかして――
深青の、恋人……?
ズキリと胸が痛くなる。が、必死でその事実から目を逸らす。
だったらなんだっていうの。
私なんか……ただ一刻、彼が気まぐれに私に目を止めたようなもので……
あんなキスだって……気まぐれで……
「――まゆ」
名前を呼ばれて顔をあげると、真っ白なタオルと着替えを手にした深青が戻って来た。
「シャワーを浴びてこれに着替えるんだ」
「――」
「まゆ?」
顔を覗き込むと、まゆは深青の視線から逃げるように顔を逸らしたまま、深青の手から着替えとタオルを奪って立ち上がった。
そしてまるで草原で天敵を見つけた野兎のようにバスルームへと飛び込む。