スーツを着た悪魔【完結】
「まゆ!」
無言で深青の声を振り切り、ぎゅっと唇をかみしめたままのまゆは、ドアをしっかりと閉めたことを確認し、ゆっくりと息を吐いた。
確かに今の態度はなかったと思う。
だけどなんと言っていいかわからない。口を開いたところで、まともな言葉は出てこなさそうだ。
とりあえずお言葉に甘えてお風呂で暖まらせてもらおう。
それからふと、壁一面の鏡に気付いて思わず息を飲む。
そこに映し出された自分は、ひどい有様だった。
よれよれで、ぺちゃんこで……
捨てられる寸前の雑巾だって、もう少しまともなんじゃないの?
自嘲しつつ、震える手でジャケットを脱ぎ、シャツのボタンに手をかけ――
まゆは物悲しい微笑みを浮かべた。
身分がどうの、とか、それ以前に……見ろ。自分をちゃんと見るんだ。
これが現実。
誰がなんと言おうと、私は彼にふさわしくない。