スーツを着た悪魔【完結】

そう言うと、おずおずとまゆは近づいてきて、キッチンに深青と並んで立った。



「テーブルも椅子もないから、このままで」

「――どうしてないの?」



まゆはカップで暖を取るように手のひらを添え問いかける。



「一人だと必要ないから」

「そう……」



そんなものなのかと思いながら、まゆはそっとホットワインを口に含んだ。


シナモンの香りがふんわりと広がる。

ホットワインと言うからもっとアルコールっぽいものかと思ったが、そうではないらしい。



「美味しい……」



というか、こんなおしゃれな飲み物自体飲んだことがなかった。


まゆが夢中で飲み始めると、隣の深青は満足げに微笑み、持っていたグラスを置いて、まゆの頬にかかる髪を指で払い、かきあげた。



「ん……?」



グラスに唇をつけたまま己を仰ぎ見るまゆの頬に、深青は唇を寄せる。



「それを飲み終えたらベッドに行こう。リラックスしたお前をもっと見たい」




< 161 / 569 >

この作品をシェア

pagetop