スーツを着た悪魔【完結】

気が付いたら尋ねられるがまま、自分の話ばかりしていたことに気付いた。

悠馬が結婚して帰国してくるまでのこの三年間、まゆといえば、短大を卒業して就職、リストラにあい転職、というその程度しか話すことがない。

ただ、悠馬に深青との話をするのははばかられたので「アルバイトからその後社員にしてもらった」としか話していないのだが。



「どうして? 僕はまゆのことがもっと知りたいよ」

「面白くないのに……」

「そんなこと言って……じゃあ、まゆが質問してご覧」

「質問?」

「僕にだよ」



悠馬はくすりと笑い、グラスを傾ける。


その横顔は、そのままウイスキーのCMに使ってもいいくらい端正で、派手ではないが、男独特の色気があった。

悠ちゃん……大人っぽい。

いや、彼は間違いなく大人の男なのだけれど。



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