スーツを着た悪魔【完結】
アルコールのせいだろうか。
いつもよりもほんの少し饒舌で、いたずらっぽく微笑む悠馬は、カウンターに肘をつき、まゆを濡れた瞳で見つめる。
「私がしたいならって……」
一瞬彼が何を言っているのか理解できないまゆだったが――
ジッと、どこか色っぽい目つきで自分を見つめる悠馬の視線の意味に、ようやく気付く。
彼は自分となら結婚してもいいと言っているのだ。
「な、なに言ってるの、悠ちゃんったら……!」
冗談に決まっているのに、そんなことを言われてまゆは真剣に赤面してしまった。
「嘘じゃないって」
「もうっ、いいったら、そんなこと言わなくてもっ……!」
まゆは手のひらでパタパタと顔を仰ぎ、席を立つ。
「ちょっと、お化粧なおしてくるね……」
「ああ」
イトコがくすりと笑う声を背中で聞きながら、まゆは駆け足でバーの端にあるパウダールームへと向かった。