スーツを着た悪魔【完結】

それから間もなくして、頼景から折り返し連絡がくる。

久しぶりに家で飲もうという話になり、深夜間近に頼景はやってきたのだが――


開口一番、ソファに座った頼景に

「すまん」

と頭を下げられて、深青の端整な眉の間に深いしわが寄る。



「いったい何があった?」

「お前の……ウサギちゃんのことを調べた」

「――は?」

「調べたんだ。澤田まゆのことを」

「――」



無言の深青の前に、頼景は書類が入っているらしい封筒を置いた。


人は怒りが強すぎると、言葉すら出てこないものなのか――

相当な短気で過去何度も失敗をしている深青だったが、目の前の封筒に手は出なかった。



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