スーツを着た悪魔【完結】
私用携帯を知っているのに、どうして……。
『帰国してから言おうと思ってたんだ。だからこっちに吹き込んだ』
留守番電話の親友の声は、どこか気落ちしているようにも思えた。
いったい何があったのだろうか。
頼景はいつだってタフで、感情的になりがちな自分とは違う。滅多なことでは落ち込まない男だというのに……。
『直接話がしたいから、帰国して時間が取れそうになったら連絡してくれ。じゃあな』
「――」
イヤな予感、というのだろうか。虫の知らせというのだろうか。
妙に胸がざわついた。
深青はすぐに頼景の携帯に、留守番電話を聞いたことを吹き込む。
時計を見ると4時に差し掛かろうかというくらいだった。