スーツを着た悪魔【完結】
改札を通り、列車に乗り込む二人。
出入り口の側に並んで立っていることがなんだか夢の中のように感じられ、まゆはふわふわと、雰囲気に酔っていた。
とにかく豪徳寺深青という男は目立つのだ。
顔立ちが美しいのは当然だが、それ以上に、佇まいが華やかで、たとえばそれは花のごとく、人を惹きつけずにはいられない雰囲気をもっている。
そんな彼の隣にいるのが私なんて、なんの冗談なんだろうか。
自分でも信じられなかった。
「――深青、電車になんか乗るの?」
結局、何を話していいかわからないからそんなことを口にしていた。
「お前、前も似たようなこと言ってなかったっけ? 俺がフレンチしか食ってないみたいなさ」
深青は苦笑しながら、自分の目の下のまゆを見下ろす。
「い……言ったっけ……」