スーツを着た悪魔【完結】
学生の頃、OBだった深青を遠くから見ていた時は、彼は雲の上の王子様だった。住む世界が違うことを、むしろ楽しんでいた。
そう、例えばアイドルを追っかけるみたいに思っていた。
遠くの世界の人だから、カッコいいなんて騒いでも罪にならないし、無責任でいられるから。
どうせ交わらない人生だから、と、私含め、当時彼に夢中になっていた女の子たちはそう思っていたように思う。
好きだけど彼を受け入れられるわけがない。
きっと私は、彼を不幸にしてしまう……。
『まゆ。いいかい? まゆは幸せになってはいけないんだよ。理由はわかっているね』
悠馬の言葉が胸の中に何度も浮かび上がる。
わかってるよ。わかってるよ、悠ちゃん……。
私にはそんな権利はない。
ちゃんと忘れるから。
頑張って、好きだって思わないようにするから……。
まゆは必死な思いで、深青から手を引き離し(それでもかなり名残惜しかった)、膝の上できつく握りしめ、浮かんでくる涙をぐっと飲みこんだ。