スーツを着た悪魔【完結】
それからしばらく車に揺られ、降りてすぐ。目の前の立派な門には、達筆で店の名前が書いてある看板が立てかけられていた。が、達筆すぎて無論まゆには読めない。
なんて読むんだろう……
と、真面目に考えこんでいると
「まゆ?」
先に進んでいる深青から声を掛けられた。
「あ、はいっ……!」
置いて行かれそうになったことに気付いて、慌てて深青たちの背中を追いかける。
すごい……なに見ても感動しちゃう。
それに、踏みしめる玉砂利の音まで上品だと、感激しながら、ここのことは一生覚えていようと心に決める。
「お連れ様はこちらに」
通された部屋は二十畳ほどで、畳の上に正座しないでいいように低めの椅子と小さなテーブルが二十ほど並べてある。
「お連れ様」の中では、どうやらまゆが一番乗りらしい。
もしかして、これみんな「お付きの人」のための食事の準備?