スーツを着た悪魔【完結】

それからしばらく車に揺られ、降りてすぐ。目の前の立派な門には、達筆で店の名前が書いてある看板が立てかけられていた。が、達筆すぎて無論まゆには読めない。



なんて読むんだろう……


と、真面目に考えこんでいると

「まゆ?」

先に進んでいる深青から声を掛けられた。



「あ、はいっ……!」



置いて行かれそうになったことに気付いて、慌てて深青たちの背中を追いかける。


すごい……なに見ても感動しちゃう。

それに、踏みしめる玉砂利の音まで上品だと、感激しながら、ここのことは一生覚えていようと心に決める。




「お連れ様はこちらに」



通された部屋は二十畳ほどで、畳の上に正座しないでいいように低めの椅子と小さなテーブルが二十ほど並べてある。


「お連れ様」の中では、どうやらまゆが一番乗りらしい。


もしかして、これみんな「お付きの人」のための食事の準備?




< 328 / 569 >

この作品をシェア

pagetop