スーツを着た悪魔【完結】
それにあの、格子の窓からのぞく美しい庭。
決して敷地的には広くないんだろうけど、とても奥行きを感じる。
なんてきれいで不思議なんだろう……。
格式のあるたたずまいに、圧倒されずにはいられない。
そうやって、ぽーっと庭を眺めていると、入口で別れたばかりの深青が姿を現し、ひょいっと顔を出し手招きした。
「まゆ、ちょっと来い」
「はい?」
「庭、見て回ろう。まだじいさんたち誰も来てないから」
深青はいたずらっ子のように笑って、まゆの手を取る。
「え、でも……」
「大丈夫だって」
戸惑うまゆだったが、結局押し切られるようにそのまま渡り廊下から、勝手に庭に下りてしまった。