スーツを着た悪魔【完結】

ただ、いざ脱がせて明るい照明の下で見てみれば、仕事がハードだからか、肌は乾いていて、髪は枝毛だらけ。

大きくて美しいと思った瞳はカラーコンタクトという始末で……。


一気に萎えた深青は、さっさとやることをやり「仕事だから」と彼女を置いてホテルを先に出たのだった。





「ああ……ごめん。そういうつもりはなかったんです……。ただ君が、あんまりにも可愛いから……それに、彼氏がいるって言ってたよね? だから君が俺なんかに本気になるはずないって……」



『よそゆき』の豪徳寺深青でなんとかこのまま電話を切ろうとしても、相手の女は『そんなの信じられない』だの『もう一度会いたい、会えばきっと分かり合える』だのと、夢のようなことを熱心に言い募り、一歩も引かない。


最初はそれを黙って聞き、しばらくの間、優しく相槌を打っていた深青だが、ひどく面倒くさくなって――

「うるせぇなぁ……お前、何。一回寝たくらいで俺の女気取り? 今更本気って冗談やめろよ。男いるくせに俺と寝た時点で本気なんて言葉信じられるわけねえだろ。気持ち悪いんだよ。つーか、そもそもこの携帯番号どっから知った? 今俺、相当引いてるよ? おい、わかってる?」

と、口にしていたのだった。



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