スーツを着た悪魔【完結】
「本当ですか? 期待しますからね」
「ああ……」
なんて不思議な人だろう。
まゆは、彼という存在をどう例えていいのかわからなかった。
性別も年齢も超えた何か、別の存在に見えて、仕方ないのだ。
彼が話すたび、さらさらと、絹糸のような髪が揺れる。笑うたび、花の香りが満ちる。
美しい人というのは、いくつになっても美しいのだと思わせられる、痺れるような美貌だった。
『深き青。美しく咲き、未だ散らず』
彼がそうささやいた瞬間、まゆの目の前には確かにその景色が広がった。
匂うような緑、今が盛りと咲く花々を……。