スーツを着た悪魔【完結】

くすりと笑って、まゆより先にナルニアに手を伸ばす彼は、ペラペラとページをめくりながら言葉をつづけた。



「これ読んで、どうしてもナルニアに行きたくて……当時イギリスの田舎に住んでたからさ。屋敷中のクローゼットを調べて回ったんだ。なのにどのクローゼットもナルニアに繋がってないから、そのうち探し疲れて、母親のドレスに埋もれて寝ちゃって……気が付いたら誘拐騒ぎであとから死ぬほど怒られた」



思い出すだけで笑えてくるのだが、当時は大変な騒ぎになったのだ。


そしてそれは、妹の美咲と未散も同じだった。

さすがに二度、三度目となると両親も慣れたもので、すぐにクローゼットが捜索されて、警察沙汰にはならなかったのだが。



「懐かしいな……」



優しい思い出に浸りながら、文字を目で追っていると――。

「っ……」

なぜか息をかみ殺したような声が耳に届く。



< 349 / 569 >

この作品をシェア

pagetop