スーツを着た悪魔【完結】
怯えたように首を横に振るまゆ。
顔は見る見るうちに、紙のように白くなる。黒の瞳は潤み、深青を震えながら見上げていた。
「とても、大事なことなの、だけど、わたし、」
不安定な黒い瞳に見つめられると、チリチリと首の後ろがひりつくような痛みを覚える。
愛したい。抱きしめたい。
全力で守るんだと、心が震える。
決してまゆを性急に欲しがったりなんかしない、と心に決めたはずなのに、理性は簡単に揺らいでしまう。
もう一方の手を彼女の腰の後ろにまわし、引き寄せると、まゆはやすやすと腕の中に納まってしまった。
顔を近づけると、彼女の首筋からホテルのノベルティの、甘いソープの香りがした。
自分と同じものを使ったはずなのに、それはまたまゆ自身の香りとまじって、彼女独自の甘い香りを放つ。
「まゆ……」