スーツを着た悪魔【完結】
深青はまゆの唇を十分堪能した後、そのまま首筋に顔をうずめささやいた。
「過去なんて……」
過去なんて……?
まゆはぼうっとしながら、肌の上で滑る彼の声に耳を澄ませる。
それからチリッと皮膚の上に小さな痛み――。
「あっ……」
何をされたのかわからないまゆが身をよじると、慰めるように深青はその上を指でなぞる。
指先の下には、彼がつけた紅いしるしがあった。
こんな風に女の肌の上にあとをつけたことは一度もなかった。長年、自分には独占欲などないと思っていた。
だが今、深青の心は激しい、怒りに似た感情に包まれている。
彼女の中から、長年まゆの心を傷つける何かを引きずり出し、ずたずたに引き裂いてしまいたい。
「知っていれば好きにならなかった? 知らないから好きになった? 知れば嫌いになる? 俺はそうは思わない」
俺たちが恋に落ちること……これはきっともう、決まったことなんだ。