スーツを着た悪魔【完結】
まゆたちが宿泊しているホテルの宴会場で、懇親会は行われた。
カジュアルなものと聞いていたが、それなりに参加者も多く、まゆは緊張しながら深青の秘書として動き回っていた。
あらかた挨拶をして回り、名刺を配り、受け取ってから、軽い飲み物で一息つく。
「結構悪くないぞ、ここの食事。ちゃんと食べろよ?」
「うん」
まゆはこっくりとうなずいて、オードブルを持っている皿の上に乗せたが、結局手は付けられないままだった。
深青の馬鹿……。
ほんの一時間前まで、あんな風に私のことを抱きしめて、好きだって言ってくれていたのに、今はもう別人みたいなんだもの。
こっそりため息をつき、まゆは数時間前の幸せな時間を心の中で反芻していた。