スーツを着た悪魔【完結】
「深青の、ばかっ……」
まゆの黒い瞳にうっすらと涙の膜が浮かぶ。
「まゆ……」
深青はそのまま、頬に手のひらをのせ、親指でまゆの目の下を撫でる。
「悪かった」
謝って済む問題ではないが、まゆにしてみれば自分勝手で傲岸不遜な深青の態度は、本当にたまったもんではなかっただろう。
そして深青のほうをようやく見ようとしている今だからこそ、ほんの数か月前までの深青は、気まぐれで女にキスをするような男だったことを思い出し、不安になっているのだ。
本当に過去の自分を張り倒したくなるが、やってしまったものはどうしようもなく、過去はなかったことに出来ない。
せめて心を込めて、相手に尽くし、今の自分を信じてもらうしかない。
「俺は今まで、家族や大切な友人以外の他人を思いやろうなんて思ったことがなかった。なぜなら他人にどう思われたってどうでもいいからだ」