スーツを着た悪魔【完結】
ぽつりとつぶやくと
「――言葉じゃない、感謝の気持ちを見せてくれてもいいけど」
目を閉じたままの深青が、唇の端を持ち上げる。
「起きてたの?」
「目を閉じていただけ」
「もう……なにそれ……」
呆れてため息をつくまゆだったが、深青は長いまつ毛に囲まれた瞳を開け、そのまま静かにまゆの耳の下に唇を寄せた。
「あのさ、お前引っ越してこない?」
「え?」
「お前んち遠いし……まぁ、今すぐとは言わねえけど。考えておけよ」
そして深青は、そのまま体を離すと、腕時計に目を落とす。
「今日は直帰ってことにして、メシでも食うか」
それからあれこれと深青は帰ってからの予定を話し始めるが、まゆはそれにうなずきながらもふと一つの可能性を考えていた。
もしかして悠ちゃんの話したいことって……。