スーツを着た悪魔【完結】

ふと床に座ったまま視線を持ち上げると、ボードの端に印鑑を発見した。


こんなところにあったんだ……。

見方を変えれば、あっけない……。


悲しいような、おかしいような、不思議な気分でまゆは笑う。


手を伸ばしそれをつかんだまゆは、立ち上がると何事もなかったかのように深青の部屋を出て行く。

頭の中にはさまざまなことが浮かんでは消えていたが、今は考えるべき時ではないと、自分に言い聞かせた。



待たせていたタクシーに乗り込み、Orlandoへと戻る。

途中、会議の休憩時間なのか、深青から電話がかかっていたのに気付いたが「ありました」とだけメールで返信し、目を閉じる。


深青は悪くない。

悪くない……。




――――……



Orlandoに戻り、印鑑を阿部に渡した後のお昼時間休みに、携帯に電話がかかってきた。

一瞬深青かと思ったが、相手は悠馬だった。


気にしないと思っていても、今は深青とどう話していいかわからなかったまゆは、ホッと息を吐く。




< 449 / 569 >

この作品をシェア

pagetop