スーツを着た悪魔【完結】
「もしもし……」
悠ちゃん相手の電話はいつも緊張するのに、安心している自分が何だかおかしかった。
『まゆ? 今、大丈夫かい?』
「うん、大丈夫よ」
『今日行くレストランだけど、ブルーヘブンホテルのフレンチを予約してあるからね』
「あ……」
La violette cristallisee(ラ・ヴィオレット・クリスタリゼ)
すみれの砂糖漬けという名前の可愛らしいレストラン。以前、未散さん、深青と一緒に行ったところだ。
まだあのころは、未散さんの前だけの偽りの恋人同士だったけれど……なんだか遠い昔のことみたい。
思わず黙り込むまゆ。
『どうした?』
「ううん。楽しみだなって。じゃあ一度帰ってから着替えて行くね」
『わかった。じゃあ車で迎えに行くから。また電話する』
「うん。じゃあまたあとで……」
携帯を切って、デスクの上に置く。