スーツを着た悪魔【完結】
『どのくらいで来れる?』
「一時間もかかりません」
『じゃあそのビルの前のカフェでメシ食ってるから、そこで』
「はい。すぐに行きます!」
携帯を切り、まゆはホッとして胸を撫で下ろす。
彼から連絡があったときは驚いたけれど、案外話はすんなりいきそうだった。
ピアスを渡さなければ、イトコからどんな嫌味を言われるか……。
想像しただけで胃が痛くなる。
性格は難ありだが、この場合は豪徳寺様様だ。
本当によかった!
――――……
携帯を切った深青は、恐ろしく長い足を邪魔そうに書き物机の上に乗せ、頭の後ろで腕を組み天井を見上げる。
やたら感謝してたな、あいつ……。
本当は、あの時小さな箱を彼女が拾い忘れていたことに気づいていた。
けれど拾ってやろうとした俺の親切を無下にするような生意気な女だったから――黙ってそれを見過ごした。