スーツを着た悪魔【完結】

それから、まゆにコットンのパジャマを着せて、手早くシャワーを浴びた深青は、天蓋つきのベッドに横たわり、どこか興奮して落ち着かないまゆをしばらく抱きしめていたが、結局寝付くまで、本を読むことになった。


深青が本棚から選んできたのは、ナルニア国物語だった。

幼いころから何度も、兄妹で読み、母親や父親に聞かされてきた物語だ。



「ナルニア……」



まゆは、そのタイトルを見ただけで緊張したように体を強張らせる。

偉大なる王アスランの死に怯える気持ちは今でも変わらないようだ。



「大丈夫。怖くないから。目を閉じて……」



深青は手元をライトで照らし、けれど腕の中のまゆにはライトが当たらないように気を付けながらナルニアへの扉を開く。

腕の中の彼女に読み聞かせる。



「――ルーシィはすこしこわくなりました。けれども、いっぽうでは、心がわくわくして、ゆくてをつきとめたくてたまらなくなりました。

かたごしにふりかえって見ますと、まだいしょうだんすの入り口のあけっぱなしにしたあたりが見えますし、そもそもルーシィが足をふみいれたあのからっぽの部屋さえ、黒い木々のみきのあいだからながめることができました……」
(岩波少年文庫『ライオンと魔女』C.Sルイス作、瀬田貞二訳より引用)



――――……






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