スーツを着た悪魔【完結】
「なにか飲む?」
「あ、じゃあ……チャイを」
「なにも食べなくてもいい?」
「はい、大丈夫です……」
深青は軽く手をあげて店員を呼び、まゆの分の注文をしてくれた。
信じられない……
言葉遣いだけじゃない。その雰囲気や表情まで、本当は演技しているなんてわからない。
そういえば昔はこの板についたジェントルマンぶりに、勝手に憧れて、きゃあきゃあ言ってたんだっけ。
あまりの豹変ぶりに、やっぱり三年前のキスも、昨夜の彼も、全て自分の夢だったんじゃないかと、自分を疑いたくなる。
一方深青は――
化粧っ気のないまゆを見下ろしながら、妙に新鮮な気分になっていた。
白いブラウスにスキニーパンツ。レースの靴下にウエッジソールの赤い靴。
透き通るような肌にやはり黒い瞳が美しい。
昨夜はカラオケルームの人工的な灯りの下だから気付かなかった。
今、太陽の下で見る彼女のほうがずっときれいだ。