スーツを着た悪魔【完結】
だとしたら、さっさと立ち去ったほうがよさそうだ。
まゆは呼吸を整えながら、そう思ったのだけれど。深青はなんだかひどく嬉しそうな表情で携帯に出てしまった。
黙って立ち去るのも悪い気がして、そのまま座り直す。
「どうしたんだ、急に珍しいな。何か欲しいものでも――え? 今? ああ……会社の前のカフェ……え? あ、ちょっと、待っ……」
どうやら一方的に話をされ、そして通話が終わったらしい。
深青はなんだか妙な顔をして切れた携帯を眺めている。
「あの、じゃあ私……そろそろ」
早くピアスを持って行かなければ……。
そんな気持ちで椅子から立ち上がった瞬間――
「お兄ちゃんっ……! 見損なったわよ!」
どこからか、凛、と響く声が深青に向かって投げつけられた。