スーツを着た悪魔【完結】
うっとりと見とれるまゆをよそに、ヴィーナスのごとき美女は、手にしていたバーキンを椅子の上に置くと、両足をしっかりと開き、腰に手を当て兄を見下ろした。
その迫力は周囲を圧倒し、むしろヴィーナスと言うよりも、戦乙女のワルキューレかもしれない。
ただし、怒りに震えていても、美女は美女だ。
まゆは突然の乱入者の彼女に圧倒されながらも、彼女から目が離せなかった。
「未散(みちる)、どうした急に……」
「どうしたもこうしたも、ないわよ。聞いたわよ、お兄ちゃん。昨日のこと」
「は?」
「お兄ちゃんと……その、連絡が取れないって、モデル仲間から私に連絡があったの。それで……」
「昨日の電話――お前が教えたのか」
なぜあのワンナイトラブの相手が俺の私用携帯を知っていたのか。ようやく話が繋がった。