スーツを着た悪魔【完結】

ごくりと息をのみ、涙目になったまゆだけれど、やっぱり仕事をこんな形で斡旋されるのは嫌だった。

自分の意見をまったくきかない豪徳寺深青にも腹が立った。


けれど――

蛇ににらまれた蛙。
ライオンに見つかったウサギ。
豪徳寺深青に微笑みかけられる澤田まゆ。



そう。にっこり笑っているけれど、深青の切れ長の瞳の奥は、まったく笑っていない。

むしろ声は営業スマイル全開だけれど、その顔は絶対零度の微笑みを浮かべている。


断ったら……殺される……!


身の危険を本能で感じ取ったまゆは、次の瞬間、こくこくとうなずいていた。



「ああ、そうだったの。よかったわ」



けれど深青に背を向けられている未散にはそこまでわからなかったらしい。

彼女はほっとしたように顔の前で両手を合わせ、兄と、その恋人を見つめている。


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