スーツを着た悪魔【完結】
週に一回……そっか。
じゃあ彼と顔を会わせることはほとんどないんだ。せめて初日の今日くらい挨拶をしたかったな。
そもそも、あれから一度も深青とは顔をあわせていない。
「あれ」というのは、あの「働かせてください!」から一度も、ということだ。
必要なことは全部メールでのやり取りだった。
しかも毎回深夜とか明け方とか、妙な時間で。
いったいあの人はどんな生活を送ってるんだろうか……。
「じゃあさっそくこれ、住所録作ってもらっていい?」
女子社員が、ドスン、とファイルをまゆの目の前に積み上げる。
「は、はい!」
ほんの一瞬、気を緩めていたまゆは、慌てて椅子に座りなおし、背筋を伸ばす。
「これが終わってもまだたくさんありますから。よろしく」
「たくさん……はい、がんばります」
ごくりと息をのみつつ、うなずいた。