モカブラウンの鍵【完結】
「杉山、何? 人の顔、じっと見て」

「えっ、あっ、寝不足でボーッとしていただけですよ。買い出しはいつも通りにします」


「ごめんなさい。私のせいよね、寝不足になったの」


うわ! 佐伯さんが謝った!

いつもは俺が謝ってるのに。

それだけ、俺がまだまだってことだけどさ。


「やあ、まあ……、気にしないでください。

あれだけ大変な仕事が終わったんだし、羽目外したくなるのもわかりますから」


佐伯さんはペットボトルを軽く揺らし、下を向いた。

「それだけじゃないけどね……」と、小さな声でボソッと言う。


佐伯さんの体が小さく見えた。

ただの後輩である俺が踏み込んではいけない気がする。

そして佐伯さんの顔を見ないであげるのが、一番だと思った。

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