モカブラウンの鍵【完結】
「ねえ、私って、カレーとスクランブルエッグしか作れないのよ」


知ってる。

それにカレーとスクランブルエッグは失敗する方が難しいだろ。

カレーは市販のルーを使っているんだし。


「幸司はそのままの私でいいって言ってくれるの。さっき『将来、子供が生まれたときのためにも』って言われたとき、ちょっと反省した。料理教室、行こうかな」

「いいんじゃない。少しずつ、料理のレパートリー増やせば。時間があるときは俺が教えてやるし」

「ありがとう」

「日曜日さ、一緒に夕飯作らない? なんか1品、教えるよ」

「そうする。お願いします」

「姉ちゃんが改まって、そういうこと言うのって、不自然」と言ったら、力一杯、耳を引っ張られた。

「ああ、お腹すいた」と言いながらキッチンを出て行く姉ちゃんの背中に目を向ける。


今回の喧嘩は早目に終わりそうだな。

姉ちゃんの手作り料理が仲直りのきっかけになるだろうな。

俺って、いい弟かも。

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