モカブラウンの鍵【完結】
「じゃあ、失礼します」

「うん。いろいろとありがとう。お姉さんにも『ありがとうございました』って、伝えておいて。

私が直接、言うべきなんだけど……。

それで、お姉さんが変な勘違いしてもね」


「ああ、はい。姉は大体、状況はわかっています。

『いつもできの悪い弟が迷惑かけてるんだから、これくらいいいわよ』って、言ってましたから。

気にしないで下さい」



「本当にありがとう。気を付けて帰ってね」

「佐伯さんも」



佐伯さんに見送られて、駅の改札を通り抜けた。


ここだけ見れば、仲の良いカップルだよな。

本当の恋人なら、俺が振り向いて手を振るだろう。


俺は時刻表と腕時計を見比べて、ホームへ下りた。


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