モカブラウンの鍵【完結】
「佐伯さん。昨日の記憶、どこまでありますか?」


使われることのなかった、もう1つのベッドに座り、佐伯さんの顔を見る。

必死に思い出そうと、天を仰いでいた。

多分、ここへ来た経緯は全く思い出せないんだろう。


そりゃそうだ。あの状態じゃ……。



「何か思い出しましたか?」

「ちょっと、黙っててよ! 今、思い出してるんだから!!」

「はあ、多分、思い出すのなんて無理ですよ」


佐伯さんは俺の言葉を無視して、まだ思い出そうと粘っている。


「佐伯さーん、佐伯さーん。説明しますよ」


思い出せないのが、かなり腹立たしいみたいだ。

ムスッとした顔でこっちを見ている。


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