モカブラウンの鍵【完結】
賀川社長にいつも通り、雑談をちょっとしてから契約に持ち込むため、いろいろと説明をする。

相変わらず社長は無言だった。

今日も「そうですか。わかりました。検討させていただきます」で終わるだろうと思っていた。


「杉山さん、指、どうかしたんですか?」

賀川社長が俺の左中指に巻かれている絆創膏を見ながら言った。

「え? あ、昨日、夕飯を作っていたとき切ってしまって」

予想外のことでびっくりした。


「そうですか。杉山さんは料理をよくするんですか?」

「はい。学生の頃から」

「ほう。お若い時からですか。男性では珍しいのでは?」

賀川社長と会話のキャッチボールができるとは思わなかった。


「そうですね。早くに母を亡くして、それで家事や料理をするよになったんです」

「これは辛いことをお聞きしましたね」

「いえ」


目の前にいる賀川社長からは近づきがたいオーラが消えたいた。

『シルバー・ラボ』のホームページに載っている写真のように温厚な感じの人に見える。

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