モカブラウンの鍵【完結】

写真

「ただいま」

 ドアを開けると、うるさい笑い声が聞こえてきた。玄関を見れば姉ちゃんの靴があった。

「ねっ、これ、笑えるでしょ。家で見たときも笑ったんだけど、もう一度見ても笑える」

 涙を流しながら笑う姉ちゃんの頭を、近くのあった雑誌で軽くはたいた。

「なんで、いるんだよ」

「あら、おかえり」と、涙目の姉ちゃんがどうでもよさそうな顔で言った。

「涼太、おかえり」

 奈央美はいつもと変わらないふわっとした笑顔だった。ああ、俺の癒し。

「あっ、顔がデレてる。あんた、本当にナオちゃんのこと大好きだよね」

「自分の奥さんを好きで、なにが悪い。で、姉ちゃんは馬鹿みたいに一人で笑ってるわけ?」

 ねえちゃんが「馬鹿?」と言いながら、眉がちょっと上にあがる。こういう顔をするときは必ず反撃する材料を持っている証拠だ。

「涼太、これ覚えてる?」

 勝ち誇った顔の姉ちゃんが一枚の写真をひらひらと揺らす。

 なんだろうと思い、その写真を強引に奪い取った。

「あああああ!」

 その写真を見た瞬間、絶叫した。それは俺の黒歴史。

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