魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
コハクが一向に戻って来ないので、心配したラスは1階に降りて庭へ行くと、ルゥが動物たちに囲まれて寝ている夢のような光景を見て瞳を輝かせた。


「あれ?チビどしたんだ?じっとしてねえと駄目だぞ」


「えーと何しに来たんだったっけ…忘れちゃった。ルゥちゃん、ママも一緒に寝るー!」


ルゥは可愛くて大好きだが、彼らが愛して止まないのはラスだ。

豚や鳥や鹿たちが思い思いに鳴いてアピールしてラスに群がり、コハクはぷんむくれながらごろんと横になった。


「つわりはどうなんだよ。だいじょぶか?」


「うん、大丈夫。それよりコー、難しい顔してるよ。せっかくかっこいい顔してるのに怒ってるみたいで好きじゃない」


「!す、好きじゃない!?傷ついた!泣きそう!」


デスかラスが構ってくれるものと思って嘘泣きをしてみたが、デスはのそりと起き上がってあろうことか寝転んでいるラスの隣に横になった。

大胆不敵なその行動に大人げない魔王が赤い瞳を光らせたが、意外と根性のあるデスはラスの手をきゅっと握り――驚くほど優しい笑みを浮かべた。


「………もう…怖い思い……させない…」


「うん、ありがとう。私も勝手に動き回らないようにするね。デスやコーやみんなが居るから大丈夫だよ」


ラスがぽうっと見惚れたような表情を見せたので、怒りを漲らせたコハクは怖がって離れていく動物たちを手で掻き分けてラスを抱き起して羽交い絞めするように抱きしめた。


「今見惚れただろ!俺以外の男に見惚れるとかどうなってんだ!チビには俺の魅力を再認識してもらわねえと…」


ぶつぶつと何事か呟いてひとり妄想の世界に旅立ったコハクから後ろ抱っこされていたラスは、込み上げてくる笑いを抑えることができずに脚をばたばたさせてきゃっきゃと笑い声を上げた。


「コーを1番好きだからお嫁さんになったんだよ?デスは2番目。あ、でもアーシェも2番目かな」


「まー!まー!」


「あ、間違えちゃった。ルゥちゃんが1番で、コーが2番目で、後は……全部3番目っ」


ラスの金の髪から金色の花の良い香りがしてひと房髪を指で掬って香りを楽しんだコハクは、3番目に降格されて唇を尖らせているデスにしたり顔を見せながらラスの首筋にちゅっとキスをする。


「とにかく2番目が生まれてくるまでじっとしててくれよ。な?」


笑顔で頷いたラスに安心しつつ、コハクはデスに目配せをして日向ぼっこを再開した。
< 166 / 286 >

この作品をシェア

pagetop