魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
リロイたちやカイは国王なので、長い間国を空けているわけにはいかない。

だがリロイはまだまだラスと一緒に居たがっているティアラの気持ちを重視して、腰を折ってティアラの頬にキスをした。


「今夜は泊まらせてもらうといいよ。僕は近衛兵たちと先に戻っているから、明日ゆっくり戻っておいで」


「いいのっ?よかった、もう少しラスたちと話したかったから」


久々に輝いた笑顔を見せたティアラをぎゅっと抱きしめると、ラスが両手で両目を隠しながらも指の隙間からこちらを見ていた。

そしてソファに座っているラスの隣に座っていた男も、同じポーズ。


「帰れ帰れー。俺はこれからハーレム作ってうはうはするんだ!」


「コー、うはうはってなあに?」


「えっとー、楽しいことー!」


「じゃあティアラ、気を付けて帰っておいで」


コハクをがん無視したリロイが手を振って部屋を後にすると、そこでようやくソファの反対側で膝を抱えて座っていたデスがぼそり。


「…ハーレムって……なに…」


「あっ、お前が居るんだった!男が俺ひとりじゃねえとハーレムじゃねえじゃんか!」


前回もそうだったが、妊娠時にオレンジをどか食いするラスのためにテーブルには大量のオレンジが。

それをせっせと横で剥いてやっているコハクは以前よりもさらに増してかつてなくうざく、ラスにべったり。


…ラスが行方不明の間の事情は軽くかいつまんで聞いていたが…ひどい目に遭ったにも関わらず、ラスはいつものようにこにこしている。

それがラスの強さであることも十分知ってはいるが…


「魔王、ラスから目を離すから大変なことになったのよ」


「うっせえな、わかってるっつーの。ほら、お前もこれ食えよ。チビの傍にいると妊娠が感染するかもしんねえから隣に座れ」


「えっ?妊娠って感染するのっ?」


目をきらきらさせて信じてしまったラスに嘘八百を吹き込んでいるコハクは心底楽しそうで、隣に移動してきたグラースに口をへの字にして見せると、グラースはオレンジを頬張りながら長い脚を組んでソファにもたれかかった。


「気にするな、日常会話だ」


「でも感染するなら感染してほしいわ。ラス、こっちに来て私を挟んで座って。パワーをもらえるかも」


「うん、わかった。私のお腹触っていいよ、グラースのお腹も触っていいよ」


勝手なことを言って2人を笑わせているラスを正面から見ていたコハクは、脚によじ登って来たルゥを抱っこして小さく笑った。


「ま、今夜はチビを譲ってやっかあ。ルゥ、今日はパパと2人で寝ようなー」


「あーいー」


寛容なふりをしてラスを喜ばせた。

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