魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
朝の霧が妖精の森を包み込む。

一気に気温が下がって身震いするほどだったはずだが――

一行はコハクの魔法に守られて、あたたかな春風に吹かれてぐっすり眠っていた。


「おいチビ、起きた方がいいぜ。チビってば」


「…ぅん…コー…まだ眠たいよ…」


「ちょっとだけでいいから起きろって。ほら、あれ見ろよ」


コハクに抱きしめられて眠っていたラスは、目を擦りながら辺りに目を凝らした。

まだ薄暗くてリロイたちも寝ていたのだが――辺りには驚くべき光景が。


「あ…!コー、妖精さんたちが…」


「ああ、花についた朝露を集めてるんだ。あれを妖精たちが加工すると様々な効果を生み出す水ができる。チビももらってくか?」


「うん!わあ…すごい…」


ふわりふわりと虹色の羽で花と花の間を飛び交いながら、小さな両手で花についた朝露を掬って袋に詰め込んでいる妖精たち。


妖精は早起きなのか、ベルルも参加していたのでがばっと起きたラスは、小さな姿のベルルに声をかけて瞳を輝かせた。


「ベルルおはよっ。朝露を集めてるんでしょ?何を作るの?」


「おはようラス。今日集めてる分は全部あなたたちにあげる。そうね…私はあなたの体調がすこぶる良くなるように呪いをかけて作ってみるわ」


「ありがとうベルル!ねえティアラ、リロイ、デス、グラースっ!起きて起きてっ」


この光景を共有したいがためにティアラたちの身体を揺らして無理矢理起こしているラスは、相変わらず王女様気質だ。

我が儘言い放題で、考え無しに行動してしまうラスを叱るでもなく起きたルゥを高い高いして遊んでやっていたコハクは、肩に乗ったベルルににやりと笑いかけた。


「俺と離れて本当は寂しいんだろ」


「そりゃ…そうですよあたしはずっとコハク様の傍に居たんですから。…でもそれももう終わり。次は子供たちの世代に任せてあたしはのんびり暮らして行きます」


「そっか。まあ俺とチビの子供たちと会うこともあるだろうからな、立派に育てろよ」


「はい!コハク様こそルゥたちが反抗期になっても泣き付いてこないで下さいよね」


「反抗期!女の子だったらマジで死にたくなる!いや、むしろ逆に可愛いかも…!」


…魔王はとことん親馬鹿だった。
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