臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
「うん、うまい}

「良かった」


ハンバーグは麻由子の得意とする料理の1つだった。どんな料理でも航平はいつも残さず食べていた。そんな航平に麻由子は何度安心しただろう。

食べ終わった後、航平がコーヒーを入れる。


麻由子が航平の入れたコーヒーを「美味しい」と褒めた時から、コーヒーを入れるのは航平の役目になっていた。

コーヒーの香りが充満するリビングのこたつに向かい合って座り、航平が口を開く。

今こそ言わなければならない。


「俺さ、異動になった」

「え?どこに?」

「札幌」

「札幌…、札幌って北海道のですよね」


札幌は北海道にしかないはず。


「そうだよ」


航平はコーヒーを一口飲んでから、麻由子の後ろに行き、抱きしめる。
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