臆病な恋心～オフィスで甘く守られて～

「ん、待ってたんだ」

「え？何でよ？それよりも、麻由子と速水さん、二人にして大丈夫なの？急いで、戻ろうよ。話ならあっちで聞くし」


麻由子がどうしているか気になった千尋は楠本の前を急いで、通り過ぎようとする。

先に楠本が戻っているだろうかと安心してゆっくりメイク直しをしていたいうのに、ここにいるなんて。


「待てよ」


千尋は手首を掴まれて、立ち止まる。

楠本は真剣な眼差しで千尋を見つめる。


「な、何？早く行かないと…」


いつもと違う眼差しを向けられて戸惑いはするけれども、足を前に進ませようとする。


「千尋が好きなんだ」


掴んだ手首を引き寄せて、抱き締める。楠本の腕の中に入ってしまった千尋は突然の出来事に目を丸くして、動けずにいた。