恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】

4.タイム・リミット




二人が去った後。


「…………」


花澄はマットの上に仰向けになったまま、肩を震わせた。

ブラウスの前を閉めなければと思うが、手が震えて、指がまともに動かない。


――――怖かった。


今になって涙が溢れてくる。

霞んだ目で用具室の中を見ると、窓ガラスの破片が散らばっている。

花澄は思わず息を飲んだ。

……環は、奨学金の選考があるのに……

こんなことをしたのがバレたら、選考に落とされてしまう。


でも……

環がそこまでして自分を助けてくれようとしたことが、嬉しい。


胸に、熱い何かが湧き上がる。

それは涙となって花澄の頬を流れ落ちていく。

環はバットを床に放り、花澄の傍へと歩み寄った。


< 332 / 476 >

この作品をシェア

pagetop